最新DPF技術の現状

交互再生式DPFの現状と問題

Mいすずセラミックス研究所

1はじめに本、効率が良くCO、排出量の少ないディーゼルジンをクリーンエネルギーとして更に活用するために、排出ガスを改善する後処理技術の一っとしてディーゼル微粒子除去装置(以下DPF)は以前から各社で開発が進められてきた。今日世界規模の排出ガス規制強化に伴い実用性のある.'PFの開発が急務となっている。

Mいすずセラミックス研究所にて開発した、現在市場で使用している燃料性状の改善を必要とせず、車輌のあらゆる走行条件でも使用できる深層濾過式炭化珪素繊維フィルター型DPF以下繊維フィルターDPF)の概要と、新たに開発した自治体向け大型路線バス用DPFの紹介及び、触媒式連続再生DPFとの相違点について解説する。

2.DPFの変遷

DPFは過去に幾多のメーカーで開発されて来た。その核となるフィルターは、図1に示すように大別するとコージエライトや炭化珪素のハニカム弐、コージエライトや炭化珪素又は耐熱金属の各孔質フォーム式、糸巻き状シリカ繊維式がある。再生方法もフィルター端部にヒーターを装着し火炎伝播により微粒子(以下PM)を焼却したり、一フイルターの出口側から空気を逆流させて、捕集したPMをフィルターの外に排出してから焼却するものなどであった。様々な方法で開発が進められたDPFではあるが、ハニカム式や、多孔質フォーム式では再生の際の熱応力による破損を解決することが出来ず、主た耐熱金属製では溶損してしまい実用レベルには到達出来なかった。

3.繊維フィルターの構造

弊杜ではDPFを開発するに当たり、過去の失て、フィルターのコンセプトを以下に固めた。

@熟応力にて破損せぬよう炭化珪素繊維を用一いた不織布フェルトを使う。

A焼却再生むらが起きぬよう金網ヒーターに図2フィルター構造よる全面均一加熱を行なう。

図2は我々の開発したフィルターであり、コンセプトを具現化した構造である。このフェルト十ヒーターをひだ状に成型し写真1の実機供試形状としている。また、フェルトは図3のように上流に14μmの細かい繊維を重ねた粗密構造とし深層濾過とすることで、必要な捕集効率と捕集時間を得ることに成功した。

4。繊維フイルターの特徴

DPFの要求性能には大きく分けて、PMの捕集効率、捕集時間、再生時間が有りそれぞれについての実測値を示す。

捕集性能PM捕集効率はDPFを取り付けるエンジンにより多少差は出るが、75-84%を達成している。図4は平成元年規制の大型トラック用エンジンにDPFを装着したベンチ試験結果で、13モードによるPM排出レベルは平成15年に施行される新短期排出ガス規制以下になっている。捕集したPMの粒子径は図5に示すように粒子径による大きな偏りはなく、健康に影響を及ぼすと言われている微小粒子(PM2.5)についても80%近い効率で捕集している。これは図6に示す捕集メカニズムの違いによる。すなわち、従来構造はフィルター壁面に明いた穴に対してPM粒子のサイズが大きけれぱ捕集し、小さけれぱ通過してしまうため、穴径以下の微小粒子の捕集は不可能となる。これに対し繊維フィルターでは、フィルターに侵入したPM粒子はフィルター繊維に衝突することで捕集されるため、フィルター繊維とPM粒子の衝突確率がPM捕集効率となり、捕集するPM粒子径とはあまり関係が無い。

4-2捕集時間
捕集時間捕集特性は図7の様に捕集開始からの時問経過に対する黒鉛濃度で評価している。捕集初期の黒鉛捕集効率は85%程度であるが、時問経過と共に捕集効率は向上し20分後には95%を越える。捕集時間はDPFの入口排気圧カが27kPa近辺にて満捕集としており、エンジン定格運転時で約30分程度である。

4-3再生時間

再生の工程は@ヒーター予熟Aフィルター再生Bフィルター冷却C再生不良判定の四段階に分かれており、再生時間とは前記@-C迄の合計時間で表している。図8は2トン車用DPFの投入電力とフィルター最高温度を示すグラフで、前記@-Bの時間が!5分であること、フィノレター最高温度が900℃であることを示している。再生時間はC工程の再生不良判定時間2分を加え約17分である。

繊維フィルターの寿命はa)再生による繊維の強度低下とb)灰分の堆積による初期圧損の増加で決まり、現在の製品はb)により30万kmとしている。

5.交互再生のシステム

弊杜DPFではフィルターを図9の様に二個並列もしくは直列に配置し、その上流に排気流路を制御するバルブを設け、片側のフィルターが捕集中はもう片側は再生する構成とし常時捕集としている。捕集フィルターの切り換え時期はフィルター入口と出口の圧カ比の検出又は内蔵タイマーの設定値にて行い、どちらかが設定値に到達した時にフィルターは捕集モードから再生モードヘ切り替わる。フィルターの再生には大きな電カが必要であり、通常の車輌に装着されているDC発電機では定格電カが大きくても、低回転時には発電電カが小さく、ヒーター予熱が不足してフィルターが再生しなくなってしまう、、このため必要な電カは自杜製の高効率高出カACG(図10)を装着し供給している。

このACGは通常の車輌に取り付けられている外部励磁式同期型ではなく永久磁石式とし発電効率を高め(45%→85%)、又極低回転域から定格出カを出し続けることが出来るためエンジンがアイドリング状態でも電力を供給することが出来る。これらを電子制御することで全自動運転システムとしている。

6.DPFのサイズ、ラインナップ

DPFシステムのラインナップは図11に示すように2トン車用、4トン車用、大型路線バス用となっている。東京都や川崎市、横浜市には既にDPFを装着した大型路線バスを合計20台ほど使って頂いており、走行距離が10万kmを越えた車輌も走行を継続している。大型路線バス用のDPFでは今回新たにフィルターの要求性能を確保しつつ重量軽減及びコスト低減を目的に新規開発を行ったので紹介する。写真3は旧型との形状を比較したもので、搭載性を向上するため外形寸法をかなり小さくし、DPFの本体重量も85→70kgと大幅に軽量化した。コストは取り付けコストの低減を含め、およそ1/2とした。

6.繊維フィルターDPFと連続再生DPFの比較

繊維フィルターDPFシステムは単純なPMフィルター十ヒーター加熱焼却であることからフィルターの再生に触媒を用いる連続再生DPFに対して以下の長所がある。

6.燃料性状に左右されない捕集再生が可能。

連続再生DPFでは、軽油中の硫黄による触媒能力低下が大きく、現在の硫黄濃度500ppmの軽油を50ppmまで下げなけれぱ後処理装置としての使用は難しい。従って、日本の場合は最短でも2003年の低硫黄化軽油が市販されるまでは使用出来ないものが殆どである。

2走行条件を選ばない再生が可能。

連続再生DPFでは触媒によるPMの燃焼開始温度は300C程度を必要とし、排気温度が250Cに達しない都市部の渋滞等の走行では、捕集したPMが再生出来ないという報告がなされている。そのため都市部を走行するには、排気温度を高くするために余分な軽油をエンジンに供給したり、DPFの敢り付け位置を排気マニフォールドに近づける等、何らかの改善が必要であると思われる。

3.フィルターの耐久性大

ハニカム式や、フォーム式では連続再生とすることで、PM燃焼時の最高温度を低くし、発生する熱応力を低く押さえ耐久性を確保している。しかし、上述の渋滞走行でPMは大量に捕集され、その後渋滞が解消し直ぐに高速走行した場合では、捕集された大量のPMが短期間に燃焼する場合が想定され、大きな熟応カが発生してしまう可能性がある。

7.繊維フィルターDPFの問題点一方、繊維フィルターDPFには上記長所である@、Aを持つために以下の欠点がある。@PM以外の有害成分を低減できない。但し、どんな軽油を用いてもPMを含め、DPF未装着時よりも排ガスが悪化することは無い。(触媒式では硫黄濃度が高い軽油を用いると、多量のサルフェートが生成しPM排出量が増加する場合がある)

A電気系が必要なためシステムが複雑'

電気系の部晶点数分システムが複雑になり、その車載にやや時間を必要とする。

8.将来展望繊維

フィルターの最大の特徴は耐久性が高いことで、これは弊社のDPFが触媒式連続再生化しても変わることがない。連続再生の間題点の一っである長時間渋滞走行後の大量のPM燃焼にも充分耐えることが出来る。排出ガス規制強化に伴い後処理装置としてはNOx触媒との組み合わせが前提となるが、噴射系が古く排気温度を上げるような細工がし難いレトロ車輌への敢り付けに向いていると思われる。

繊維フィルターには耐久性が高い以外に、極微小粒子(粒径50nm以下)の捕集性能が高いと言う報告がなされている。弊杜の繊維フィルターDPFも同じ特性を持つか調査中ではあるが、今後PM排出量低減のためエンジン本体の改良で燃料噴射圧力の高圧化が進めぱ進むほどPM粒子径は徴粒化するため、繊維フィルターの特徴が発揮できるものと思われる。

参考文献

1)一(財)石油産業活性化センター"JCAPディーゼル既販車対策技術評価結果報告書"、2000

2)VERT''Curtailing Emission of Diesel engine in tunne1sites1'、1997

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